①月経痛はないのが当たり前 月経困難症 思春期編
②正常な月経とは? 〜経血量チェック〜
③異常な月経とは?
④月経前症候群(PMS)とは?
・私の月経痛とPMS治療の体験談(低用量ピル編)
・私の月経痛とPMS治療の体験談②(性成熟期と漢方薬編)
⑤月経痛とPMSの西洋治療と漢方治療について←今日はココです。
西洋医療の薬物治療
漢方治療をお話しする前に、月経痛とPMSの西洋医療の薬物治療について簡単に触れたいと思います。
ホルモン治療について
女性ホルモンには卵胞ホルモンと黄体ホルモンがありますが、このホルモンを少量使って排卵を止める「排卵抑制療法」という薬物治療があります。
・月経困難症に、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが両方入った、低用量経口避妊薬(OC、低用量ピルともいわれます)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEPともいわれます)
・月経困難症、子宮内膜症、子宮腺筋症に、黄体ホルモン製剤のジエノゲスト
・過多月経や月経困難症に、子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG-IUS)
などがあります。
この他、症状に応じて
・月経痛に対して→鎮痛剤・抗コリン薬(子宮のけいれんを抑える治療法)
・むくみに対して→利尿剤や抗アルドステロン療法(尿量を増やしてむくみを取る治療法)
・精神神経症状や自律神経症状に対して→精神安定剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬物療法(精神状態を安定させる神経伝達物質のセロトニンを維持する治療法)
などがあります。
漢方治療
医療機関で月経困難症やPMSによく使われる保険処方ができる漢方薬は、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸です。
これらは婦人科のホームページなどでもよく紹介されていますので、今回は違った方向からお話ししたいと思います。
日本では一般に「漢方薬」と呼ばれますが、「日本漢方」と「中医学(中国伝統医学)」という異なる理論体系があります。
「日本漢方」の古方派の診察では、多くは「方証相対(ほうしょうそうたい)」という手法を用います。鍵穴にぴったり合う鍵を探すように、症状に対して効果的な漢方薬をマッチさせます。例えば、首すじや肩のこり・頭痛・汗が出ずに寒気がするという「葛根湯証」には「葛根湯」という考え方です。
「中医学(中国伝統医学)」の診察では、「弁証論治(べんしょうろんち)」という方法を用います。「弁証論治」とは、一人ひとりの「証(体質・病気の本質)」を「四診」という診察法を用いて、どのような「証」なのかをまず判断し(弁証)、その「証」をもとに治療します(論治)。症状だけに注目するのでなく、体質や病気がどこから来ているのかを確認するため時間がかかります。
私はこの中医学の方法を用いて漢方薬をお選びする方法を採っていますので、この症状にはこの漢方薬が良いと簡単に書けませんが、結果的に当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸を選ぶことはありますし、保険外の漢方薬をお選びすることもあります。
「月経痛にはどんな漢方が良いか?」
と聞かれることがしばしばありますが、簡単に答えることができません。体質が分からなければ適切な漢方を選べないからです。中医学を学ぶ前の私であれば、「あなたは色白で虚弱だから当帰芍薬散を試してみたらどうだろう」と言ったかもしれません。でも、中医学の頭を持つとそのように判断できません。
今、あなたが悩んでいる月経痛やPMSはどのような体質からきているものなのか。
どんな養生をしたらいいのか。まずはそれを確認するためにご相談にいらっしゃいませんか?